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小型デバイスによる解析は大規模な炭素貯留をサポートする

ラボオンチップが岩石中でどのようにガスが化学反応を起こすのか、高時間分解能とスケールで明らかになりました。 文:Prachi Patel 2022年8月11日 地球温暖化による壊滅的な被害を防ぐために、国連などの機関は二酸化炭素を閉じ込め、貯留する技術を緊急に拡大するよう呼びかけています。 そのためには大量の二酸化炭素を回収し、地下の岩盤に注入しなければなりません。しかし、このプロセスの長期的な有効性と信頼性についてはまだよくわかっていません。 スタンフォード大学の科学者らは、地下への大規模な貯留の影響を評価するために小さな装置に注目しました。これはラボオンチップ、あるいはマイクロ流体デバイスと呼ばれ、物質の物理や化学を微視的スケールで研究するためによく使われるものです。研究者らは現在、この装置に頁岩(けつがん)の微小片を入れ、ガスや酸にさらされたときに岩石がどのように反応し、変化するかということについて研究しています。 Proceedings of the National Academy of Sciences誌に掲載されたこの研究の結果は、特定の地質場所に貯留された二酸化炭素、その他のガスや廃棄物がどのようになるかということを評価するための情報になります。 炭素回収と貯留は世界中で増加しており、すでに30の大規模プロジェクトが稼動しており、少なくともその3倍が計画されています。これらのプロジェクトのほとんどは、塩水帯水層や油性・ガス井に温室効果ガスを閉じ込めています。…

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糖に分解できる廃棄物系バイオマスを原料とする強靭なプラスチック

安価な材料で作ることができ、従来の食品包装用プラスチックと同じように高温に耐え、また食品に有害なガスを遮断することができます。 文:Prachi Patel 2022年7月21日   プラスチック汚染に対処するためには、プラスチックの使用量を減らし、リサイクルを促進する必要があります。しかし、プラスチックは現代の生活には欠かせないものとなっています。そこで、研究者はプラスチックの欠点に対処するもうひとつの方法として、強度を持ちながらも自然界で分解可能なプラスチックを作ることに取り組んでいます。 最新の取り組みはスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のチームによるもので、彼らは非食用植物から環境中で無害な糖に分解されるプラスチックを作りました。このプラスチックは従来のプラスチックに非常に近い特性を持っているため、食品や飲料の包装に適しています。強度があり、高温に耐え、食品を傷める酸素などのガスを遮断することができます。 現在市販されているバイオプラスチックは、トウモロコシのデンプンやサトウキビから得られる糖類を原料としているのが一般的です。しかし、その特性は化石燃料由来のプラスチックと真っ向から競合できるものではありません。高価であることに加え、高温に耐えられない、さまざまな形状に引き伸ばすことができない、ガスを遮断することができない、など様々な課題があります。また、自然界では従来のプラスチックと同じように分解が困難な場合も多くあります。 2016年、EPFLの研究者らは、植物の木質で食べられない部分からプラスチックやバイオ燃料に価値のある分子を作る方法を発見しました。彼らの研究は植物の細胞壁に含まれ、植物に剛性を与える長鎖状の分子であるリグニンに着目しています。リグニンは地球上で2番目に多く存在する天然物質ですが、農業や製紙業から排出される廃棄物でもあります。EPFLの研究チームは、一般的な化学物質であるホルムアルデヒドを加えることで、リグニンを有用な分子に変えることができることを発見しました。 Nature Chemistry誌に掲載された新しい研究では、上記の研究をさらに発展させています。新しい研究では、ホルムアルデヒドの代わりにグリオキシル酸を用いて、リグニンをプラスチックの主要な構成要素に変換しています。その結果、農業廃棄物の重量の最大25パーセントをプラスチックに変換することができたと報告しています。 このプロセスはシンプルで拡張性があり、安価な無機酸を触媒として使用するものであると研究者は報告しています。また、グリオキシル酸は工業的に入手可能な安価な化学物質です。 実験室でのテストでは、従来のプラスチックと同様に100℃の高温に耐えることができました。また、強度や剛性も同様の結果を示しました。さらに、包装用フィルムや、紡いで布にする繊維、3Dプリンター用のフィラメントに応用することができました。 この素材は化石由来のプラスチックと同じように化学的にリサイクルすることができます。また、環境中に廃棄されたとしても、最終的には常温の水中で構成要素である糖に分解されます。このプラスチックは、安価で持続可能なプラスチックとして有望視されていますが、「このポリマーの環境動態を完全に理解するには、毒物学的および生分解性に関する詳細な試験が必要である」と研究グループは書いています。 出典:…

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絶滅を避けるため集中的かつ実践的な支援が半数以上の希少種に必要

世界のリーダーらは世界の生息地の30%を保護することを約束していますが、多くの絶滅危惧種にとってそれだけでは十分ではないと科学者らが警告しています。 国際的な協議では絶滅の危機を食い止めるために何をすべきか議論していますが、その議論は主にどのくらいの生息地を保護するかに焦点が当てられています。しかし、最も絶滅の危機に瀕している多くの動物にとって、生き残るためには生息地を確保するだけでは不十分です。 自然保護科学者のチームによると、希少種の半数以上は、動物園での繁殖、野生環境における追加の給餌、空き地への移動、病気に対するワクチン接種など、集中的かつ実践的な支援を必要としているといいます。 「この研究は特定の地域を保護するだけでは種の絶滅を防ぐことはできないことを示している」と、バードライフ・インターナショナルの主任科学者で、今回の研究に参加したStuart Butchart氏は述べています。 この調査結果は、生物種の保全に関する主要な国際協定である国連生物多様性条約に関する締約国会議がモントリオールで開催される5カ月前を前にして発表されたものです。 自然保護論者や一部の世界的な指導者らは、生物種の生息地として地球上の陸地と海の30パーセントを保護するよう働きかけており、このことが大きな注目を集めてきました。しかし、Butchart氏や他の科学者らは、生物種が生息する場所の保護と復元に注力することが、最も危機に瀕している生物にとって十分であるかどうかということを精査したいと考えました。 Butchart氏は、6つの大陸から集まった17名の自然保護科学者から成る、国連のような研究チームに参加しました。彼らはまず、国際自然保護連合(IUCN)が管理する絶滅危惧種のリストを確認しました。一般に「レッドリスト」として知られるこのリストは、地球上の絶滅危惧種を網羅した最も権威のあるものとされています。科学者らは、37,000種以上あったリストを、特に絶滅の危機に瀕していると思われる7,784種に絞り込みました。両生類(2,444種で最多)からカブトガニ(2種)まで、さまざまな種類の生物が含まれています。 そして、これらの生物が直面する主な脅威についてIUCNが記述したものを詳細に調べ、2021年7月に発表された保護協定の最新草案に明記されているさまざまな行動と照らし合わせていきました。そのうちの7つの目標は、生息地の回復と保護、汚染や野生動物の過剰消費及び外来種の蔓延を抑制するための公約を中心に据えています。 研究者らは学術誌Frontiers in Ecology and the Environmentで、最終的にはこれらの目標では、絶滅危惧種の57%が直面しているすべての脅威に対処することはできないと報告しています。…

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低コストな人工葉が数週間にわたり水素を生成

水を分解して水素燃料にする太陽光集光材料で作られたシステムは、通常、数分から2日程度しか持たないが、化学者と材料科学者のチームが、これを数週間まで可能にしました。 文:Prachi Patel 2022年6月16日 豊富な材料で作られた新しい人工葉が、水と太陽光から数週間にわたって水素を発生させ、これまでの記録を塗り替えたと新しい研究が報告しました。この発見により、燃料となるグリーン水素を持続可能かつ安価に製造する方法が可能になる可能性があります。 水素は燃料として、ガソリンやディーゼルに比べて重量あたり3倍、リチウムイオン電池よりもはるかに多くのエネルギーを保持することができます。また、水素を燃料として電池のようなもので走る水素燃料電池自動車は、副産物としてマフラーに水が出るだけです。水素は特に航空や船舶などの長距離輸送の燃料として有望視されています。 しかし、輸送の脱炭素化のためには、水素はより環境に優しいものでなければなりません。現在、水素は主にメタンを分解して製造されていますが、その際、二酸化炭素が発生します。グリーン水素は、再生可能な電力を使って水を分解することで製造されます。 電気を使わずに水素を製造するもうひとつの方法は、植物の光合成に似た方法で水を分解するために太陽光を利用することです。しかし、ペロブスカイトのような安価で地球上に豊富にある材料で作られた人工葉デバイスは、水に浸すとうまくいかず、通常数日しか持ちません。 英国の化学者と材料科学者のチームが、Nature Materials誌に無毒で入手しやすいビスマス酸ヨウ化物という光吸収材料を用いた装置について報告しています。ケンブリッジ大学材料科学・冶金学教授のJudith Driscoll氏はプレスリリースで、「我々は、この材料の幅広い用途の可能性と、製造が簡単で毒性が低く安定性が良いことから、以前からこの材料に取り組んできた」と述べています。 さらに、ビスマス酸ヨウ化物の安定性を高めるために、それを2枚の金属酸化物層で挟み込みました。そして、撥水性のあるグラファイトペーストで装置をコーティングし、光吸収層の安定性を数分から数週間へと向上させました。 研究チームは太陽電池にヒントを得て、ガラス表面に小さな光を吸収するエリア(ピクセル)のあるデバイスを作製しました。試験の結果、この複数のピクセルがあるデバイスは、同じ面積の大きなピクセルを1つ持つ従来のデバイスよりも性能が優れていることがわかりました。これは、一部のピクセルに欠陥があっても、他のピクセルの性能に影響を与えないためです。 この材料とピクセルの設計コンセプトは、持続可能な水素製造のための大規模な人工葉システムへ道を開く可能性があると研究チームは述べています。 出典:…

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自然に基づいた農法は、化学肥料との併用で収量を増やすことができるのだろうか?

自然に基づいた農法が化学肥料の大部分を補い、高い収量を達成できることを生態的集約化(ecological intensification)に関する最も包括的な研究の1つが明らかにました。 文:Emma Bryce 2022年6月8日 農業において、環境に優しい農法が工業的な農地と同じ収穫量を達成できるのかということは長年の疑問です。 新しい研究によるとその答えは少なくとも部分的には可能だということです。自然に基づいた農法と伝統的な農法を適切に組み合わせることで、化学肥料の使用量を大幅に減らしながら、同じ収穫量を得ることができると示しています。 この研究では、ヨーロッパとアフリカで使われた自然にやさしい農法に関する30以上の長期的な研究(そのうちのいくつかは9年間にわたるもの)を通じて集められた大量のデータを分析し、作物の多様化、マメ科植物などの窒素固定植物の栽培、廃棄物の土壌への撒布などの方法が、世界の農地で高収量を得るために投与されている化学肥料の大部分を代替できることを研究者らが明らかにしました。 これらの方法は、現在普及が進んでいる「生態的集約化(ecological intensification)」と呼ばれる農業アプローチに該当します。これは「収量の維持または増加のために、人為的投入の役割を補完または代替する」一連の自然プロセスを説明するものであると研究者は書いています。この新しい研究で引用された一人の研究者は、これらの手段を「自然によって維持され、自然の中で持続可能であるもの」と説明しています。 従来の農業では土壌や水、海洋を著しく汚染し、生産過程で大量の温室効果ガスを排出する化学肥料がその多くを占めていましたが、これはその影響を軽減しつつ、高い食糧生産量を維持することを目的としています。 さまざな農業において、これまで生態的集約化がどの程度収量を増加させるのか、誰も実際に調査したことはありませんでした。そこで研究者らは、様々な手段を用いて30件の研究から収集した確実なデータを組み合わせ、その効果を比較対照できるモデルを構築しました。 このデータセットには、生態的集約化に関する方法とさまざまなレベルの合成肥料散布を組み合わせた農場試験もいくつか含まれています。これを用いて研究者は、自然に優しいアプローチが、収量を増加させるためのより伝統的な方法とどの程度両立できるかを調べ、相乗効果の可能性について調査しました。 その結果、さまざまな地域や農業の状況において、生態的集約化が化学肥料の重要な代替物となり得ることが明らかになりました。農地にマメ科の窒素固定植物を植えれば、窒素が土壌に固定され、植物に自然に栄養分が供給されます。また、家畜の糞尿を土壌に混ぜると、窒素、リン、カリウムが供給され、収穫量が増えます。また、被覆植物で作物を多様化することで、土壌の肥沃度を高め、病害虫に強い畑にすることができます。 しかし、研究者らはこの関係に複雑な問題があることも明らかにしています。それは、農家が土壌に与える化学的な窒素肥料の量によって、生態的集約化の効果が制限されることです。通常レベルの化学肥料が畑に散布されている場合、自然に優しい農法の利点が打ち消されてしまうのです。例えば、窒素固定効果のあるマメ科植物を加えても、少量の化学肥料を施した場合のみ収量が増加し、窒素肥料を広範囲に散布した場合には、その効果はかき消されてしまいます。同様の結果は、堆肥の散布や作物の多様化でも見られています。…

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高層ビルのエレベーターを使った発電方法

高層ビルを「重力バッテリー」にするアイデア エレベーターを利用して重い荷物を上下させることで電池よりも低コストでエネルギーを蓄えることが可能になるという斬新なコンセプト 文: Prachi Patel 2022年6月2日 重力から逃れるのは難しいことです。ではなぜそれを有効活用しないのでしょうか?研究者らは、重力を利用してエネルギーを貯蔵することで高層ビルを巨大なバッテリーに変えるという新しいコンセプトを提案しています。このアイデアにより既存のエレベーターと高層ビルの空きスペースを活用することができます。 再生可能エネルギーを使って、重い固体をビルの最上階まで運び、位置エネルギーとして効果的に蓄えるというもので、その固体が下に降りてくるときに、発電機を動かして電気を発生させます。世界中に高層ビルがあることから、このようなシステムによって毎時30〜300ギガワットのエネルギーを貯蔵することができると研究チームはEnergy誌に報告しています。 再生可能エネルギーが世界的に急増する中、電池に代わる低コストで長寿命のエネルギー貯蔵に対するニーズが高まっています。重力エネルギー貯蔵は、世界中で試されている新しいコンセプトの1つです。いくつかのスタートアップ企業が、クレーンや既存の鉱山坑道を利用して、重い塊を持ち上げたり落としたりしてエネルギーを貯蔵・放出するシステムを開発しています。 エレベーターは、エネルギーを貯蔵する場所がすでにあり、そのエネルギーが必要な場所に設置されているという大きな利点があります。世界中で1,800万台以上のエレベーターが稼働していますが、その多くが空の状態で使われていません。この間、再生可能エネルギーを活用できれば、エレベーターは湿った砂の入った大きなコンテナのような重いものを上まで持ち上げることができます。自律型トレーラーロボット(エレベーター)がそのコンテナを持ち上げ、運搬できるのです。 そして、電力が必要になったら、重いコンテナを下に落として、回生ブレーキシステムで運動エネルギーを回収します。回生ブレーキは、動いている車や物体から、熱になるはずの運動エネルギーを回収し、電気に変換します。電気自動車やハイブリッドカーによく使われています。 この論文の主執筆者で、また電気トラックを坂道で走らせ、エネルギーを蓄えるというアイデアを最近提唱したオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)のJulian Hunt氏は、「これは既存のインフラを利用して、エネルギー貯蔵という二次サービスを提供するという点で、現実的な選択肢となる。この技術は、都市部で電気を消費する場所の近くに分散してエネルギーを貯蔵できることから重要である」と述べています。 導入にあたっては、ビルの上下にコンテナを収納するための空きスペースがあることと、回生ブレーキシステムを搭載したエレベーターがあることの2点をクリアする必要があります。 Hunt氏は、現在、回生ブレーキを搭載したエレベーターを導入している建物はごくわずかであるものの、今後、世界中の多くの建物に導入されることが予想されると述べています。また、老朽化して交換が必要なエレベーターにも、回生ブレーキシステムを導入することができます。…

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AIが設計した酵素がプラスチックゴミを数日で分解

新しい酵素は、従来のものよりも低温で機能するため、より環境に優しく、より速く作用し、より安価な選択肢となる 文:Prachi Patel 2022年5月5日 世界で毎年生産される約4億トンのプラスチックのほとんどは埋立地や自然環境で分解されるまでに何世紀も放置される可能性があります。 研究者らは、人工知能(AI)の力を利用して、一般的に使用されているプラスチックをわずか1日から2日で分解できる酵素を設計しました。Nature誌に掲載されたこの酵素は、繊維や食品・飲料の包装によく使われるポリエチレンテレフタレート(PET)を化学的構成要素に分解します。 研究者らはまた、この分子を再びPETプラスチックにリサイクルできることを明らかにしました。このことは酵素を用いたプラスチックのリサイクルを工業規模で実現できることを示すものだと研究チームは述べています。テキサス大学オースティン校の化学工学教授で、この研究の共著者であるHal Alper氏は、「この研究がプラスチックの循環型経済を実現する方法を確立するきっかけになれば良いと思う」と言っています。 研究者らは2005年に、ヒドロラーゼ(加水分解酵素)と呼ばれる一種の酵素が、PETプラスチックを構成する長く強く結合した分子鎖を切ることができることを初めて明らかにしました。それ以来、同様の働きをする他の酵素がいくつか開発されています。フランスのスタートアップであるCarbiosは現在、人工のバクテリア酵素を使ってPETプラスチック廃棄物をリサイクルする産業施設の建設を計画しています。 しかしながら、これまでの酵素を使った方法のほとんどは高温が条件として必要となっていました。これに対し、新しい酵素は室温に近い温度で作用するため、エネルギー消費量が少なく、コストも低く抑えられます。また「既存の他の酵素と比較しても迅速に作用する」とAlper氏は言っています。 Alper教授と彼の同僚らは、まず、ある種の細菌が生産するPETaseと呼ばれる酵素から研究を始めました。この酵素は常温でPETを分解すると知られていますが、約24時間経過すると効果がなくなってしまいます。他の研究者は、この酵素をより強固にするために工学的に改良しようとしましたが、あまり効果的ではありませんでした。 そこでUT Austinの研究チームは、どの酵素に変異を加えれば低温でより速く作用するようになるかを見極めるため、機械学習アルゴリズムを活用しました。そして、この変異型酵素をつくり、51種類の使用済みプラスチック容器で試してみました。すると、酵素は48時間以内にペットボトルや容器を完全に分解し、場合によっては1日以内に分解したものもあったのです。 Alper氏は、現在「このプロセスを工業的な条件下でスケールアップする方法と、この同じタイプのアプローチを他のプラスチック資源に適用する方法を評価しているところだ。世界のいくつかの企業が大規模な酵素解重合を検討し始めているので、この研究はかなり有望だと思う」と言っています。 出典:…

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洗濯の仕方を変えれば、大気汚染を大幅に削減できるかもしれない

新しい研究によると、タンブル乾燥機はマイクロファイバーによる汚染を引き起こすことがわかりました。短期的な解決策はドライヤーシートや柔軟剤の使用と糸くずフィルターの改善です。長期的な解決策はコンデンサー式乾燥機を使用することです。 文:Sarah DeWeerdt 2022年4月12日 タンブル乾燥機は、洗濯機よりも多くのマイクロファイバーを発生させると新しい研究が指摘しています。マイクロファイバーとは、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性のある小さな繊維のことです。マイクロファイバーの多くは乾燥機の糸くずフィルターに付着しています。それでも、洗濯物をタンブラー乾燥すると空気中に、洗濯によって排出されるマイクロファイバーとほぼ同じ量のマイクロファイバーが放出されているのです。 研究チームのメンバーで、イギリスのニューカッスル・アポン・タインにある消費財メーカーProcter & Gamble社の研究者Neil Lant氏は、「換気乾燥機からの大気汚染は非常に深刻だ」と指摘しています。しかしこの問題は「長期的には、機器のろ過技術の進歩によって比較的容易に解決できるはずである。エネルギー消費を抑えるために、コンデンサー式乾燥機やできればヒートポンプ式乾燥機への移行と共に実施されると理想的だ」と言っています。 Procter & Gamble社とNorthumbria大学のLant氏と彼の同僚は、ヨーロッパと北米の洗濯機、洗濯用品、典型的な洗濯機の設定を使って、綿100%とポリエステル100%のTシャツを10枚ずつ、合計1200枚を洗濯・乾燥させました。そして、洗濯機の排水口から排出されたマイクロファイバー、乾燥機の糸くずフィルターから採取したマイクロファイバー、乾燥機の排気口から空気中に放出されたマイクロファイバーの質量を測定しました。 近年、洗濯機から発生するマイクロファイバー汚染についての懸念や研究は多く見受けられますが、衣類乾燥機からのマイクロファイバーについてはあまり知られていません。今回の研究は、同じ衣服の洗濯と乾燥の両方から発生するマイクロファイバーを定量化し、直接比較する初めての試みです。 ヨーロッパと北米の洗濯条件で試験を行った結果、タンブラー乾燥で空気中に放出されるマイクロファイバーの量は、洗濯で「排水口」に排出される量と同程度であることが分かった」と研究者らはPLoS ONE誌に報告しています。…

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エンジニアが夜間でも発電できる太陽電池を開発

夜間にLED電球の点灯や携帯電話の充電ができ、高価なバッテリーの必要性がなくなる可能性があります。 文:Prachi Patel 2022年4月21日 太陽光発電の大きな制約の一つは太陽が沈むとソーラーパネルが機能しなくなることです。スタンフォード大学の研究者らは、今回その制約を克服しました。市販の太陽電池に手を加えることで、携帯電話の充電やLED電球の点灯に必要な電力を夜間に作り出すことができる太陽電池を作ることに成功したのです。 この研究成果をApplied Physics Letters誌に発表した電気工学科のShanhui Fan教授は、「太陽電池の時間的な動作範囲を真に拡大したかった」と語っています。 太陽電池はシリコンなどの材料でできていて、太陽光を吸収して電荷キャリアを生成し、電流を流すことができます。また、日中は太陽光を吸収して暖かくなります。そして夜、暗い空になるとその熱を宇宙空間に放射します。この現象は放射冷却と呼ばれ、研究者はこれを利用して、太陽光を反射する塗料や材料、建物の冷却システムなどを作ってきました。 Fan教授らはこの現象を利用して、2019年にLED電球の点灯に十分な電力を発生させる装置を開発し、報告しています。彼らは今回、このアイデアを太陽電池と統合させました。 Fan教授らは、市販の熱電発電モジュール(温度差で発電する装置)を、シリコン太陽電池の下側に取り付けました。夜間、太陽電池が熱を放射すると、その温度は周囲の空気より数度低くなります。これにより、太陽電池側は冷たく、空気側は熱いという温度差が熱電発電モジュールに生じます。 スタンフォード大学の屋上で行ったテストでは、この装置は1平方メートルあたり平均50ミリワットを発電しました。Fan教授は、日中の太陽電池の発電量が1平方メートルあたり100ワットであることに比べれば発電量が多いわけではないが、非電化地域や低資源地域でのバックアップ電源としては十分だろう、と指摘しています。さらに、日中に発電した太陽光をバッテリーで蓄電するよりも、低コストで長期的に活用できる可能性があります。 Fan 教授によれば、断熱材と熱電装置をさらに改良し、太陽光の吸収能力を犠牲にすることなく、より多くの熱を放射するように太陽電池を設計すれば、このシステムからより多くの夜間電力を発電できると言っています。理論的には、1平方メートルあたり1ワットまで可能です。…

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食品廃棄物とファッションによる汚染に挑む科学者たちー真菌を使った人工のコットンとレザーの製造

パンを食べる菌の胞子が作り出した天然繊維は、綿やレザーを再現するように加工でき、従来の素材よりもはるかに少ない水とエネルギーで作ることができます。 文:Prachi Patel 2022年3月24日 ファッションによる最大の過ちは環境に与える影響でしょう。国連環境計画(UNEP)は、ファッション産業は世界の二酸化炭素排出量の10%を占め、水の消費量も2番目に多いと報告しています。 スウェーデンのボロース大学の研究者らは、より環境に配慮したファッションを実現するため、菌類に着目しました。この研究チームは、パンを食べる菌を活用し、食品廃棄物をレザーや綿、紙のような見た目の素材に変換したのです。 米国化学会(American Chemical Society)の春季大会で発表されたこの研究は、食品廃棄物とファッション産業による汚染によって大きな影響を受ける環境に対処するための革新的な解決策となります。この菌類を使った素材は、食品廃棄物を経済的に活用できるほか、従来の素材に比べて水やエネルギーの使用量がはるかに少なく、製造も短時間で済むといいます。 人間が消費するために生産される食料の約3分の1は廃棄され、埋立地で腐敗することで温室効果ガスを排出します。 この廃棄物を利用するために、バイオテクノロジストのAkram Zamani氏とその同僚は、腐敗した食品に付着して成長する糸状菌リゾプスデレマーに注目しました。彼らはスーパーマーケットから古いパンを集め、乾燥させ、砕いてパン粉にしました。そしてそのパン粉と菌の胞子を水の中で混ぜ合わせ、小型の反応器(リアクター)に入れました。 すると、パンを食べた菌は、キチンやキトサンというアミノ多糖類からなる微細な天然繊維を作り出したのです。この繊維は菌の細胞壁の中に蓄積されました。2日後に細胞を回収し、動物の飼料に使える可能性があるという脂肪分とタンパク質を取り除きました。その結果、繊維状の細胞壁を含むゼリー状の残留物が残りました。 こちらもご覧下さい:Combining 3…

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森林は驚くほど早く、予期せぬ回復の道をたどる

新しい研究によると、伐採された森林の炭素、窒素、土壌密度は、1年から9年後に手つかずの森林の90%のレベルまで達することがわかりました。重要なのは、そのままにしておくことでした。 文:Warren Cornwall 2022年2月16日 ジャングルは、根や蔓の下に全ての文明を隠してしまうほど奔放に成長します。森林破壊の傷跡を癒すには、この繁殖力が不可欠です。 中南米や西アフリカで農業や牧畜のために焼失・伐採された熱帯林は、1世紀あまりで回復し、いくつかの重要な特徴は数十年で回復する可能性があると新しい研究が報告しています。 科学者らは、地球上のジャングルの破壊に対する万能薬ではないものの、この発見は、これらの場所の多くが、放っておけば生物多様性の豊かな場所となり、大気中の炭素も吸収する緑豊かな森林を取り戻せることを示唆していると述べています。 オランダのワーゲニンゲン大学の生態学者であるLourens Poorter氏は、「これらの再生林は広大な地域をカバーしており、生態系回復のための地域的・世界的な目標に貢献することができる」と述べています。 アマゾンのような熱帯ジャングルが地球の肺と呼ばれるのには、それなりの理由があります。豊富な水、長い生育期間、肥沃な土壌に支えられ、地球の赤道直下に位置する森林は、大気中の膨大な量の炭素を吸収し、世界の3分の2の生物種の住処となっています。 しかし、この豊かさにより小規模な入植者から巨大な農業会社まで、伐採者、牧場主、農民のターゲットにもなっています。現在、熱帯雨林は全体の50%以下しか残っていません。 熱帯雨林の保護に取り組む一方で、牧草地や農地と化した森林の行く末が注目されています。アメリカ大陸の熱帯地域だけでも、伐採後に再生している森林は28%と推定されています。そこで、世界各地の研究所から集まった90名の科学者チームが、これらの土地がどのように回復していくか調べました。 このような回復は何十年にもわたるため、研究者らは、原生林を含むさまざまな成長段階にある77カ所を同時に調査し、そのプロセスを早めるように努めました。伐採後、100年以上放置された場所もあれば、1年程度放置された場所も含まれています。また、中南米と西アフリカの沿岸部に点在する乾燥林と湿潤林の両方が対象となっています。 研究者らはそれぞれの場所で、土壌の組成、葉や幹のサイズ、土壌中の窒素を固定する植物の数、全植物の総量、最大の木、植物種の多様性など、さまざまな種類の生態系動態を示す12の主要な指標を測定しました。 こちらもご覧ください:Circular…

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糖類を使ったプラスチック:丈夫でリサイクルでき、分解できるというおいしい話

研究者らは、一般に入手可能なプラスチックと同等、あるいはそれ以上の性能を持つ、硬く弾力のあるプラスチックを作ることに成功しました。 文:Prachi Patel 2022年1月20日 研究者らは糖類を出発点として、一般に流通しているプラスチックと同等またはそれ以上の性能を持ち、しかも分解可能でリサイクルしやすいサステナブルなプラスチックを作ることに成功しました。これは、他のリサイクル可能なプラスチックとは異なり、再加工しても機械的性質が悪化することがありません。 研究チームは、ゴムのように伸縮する素材と、日常生活で使われる多くのプラスチックのように強靭かつ柔軟な素材の2種類を作りました。そしてこの研究成果は、Journal of the American Chemical Society誌に掲載されています。 プラスチック汚染が深刻化する中、研究者らは非石油材料から持続可能なプラスチックを作る努力を続けています。トウモロコシやサトウキビのでんぷんのような再生可能な植物資源から作られた生分解性プラスチックは、すでに市場に出回っており、石油系プラスチックの代替品として人気を集めています。しかし、生分解性には疑問があり、一般的に生分解できるのは産業用コンポスト施設のみで、他のプラスチックとは別にリサイクルする必要があります。 バーミンガム大学(英国)のAndrew Dove教授(化学)と共同でこの研究を率いたデューク大学のMatthew Becker教授(化学)は、「既に知られているサステナブルなプラスチックの機械的性質は、市販のプラスチックと一致しない」と述べています。また、「他の多くは砂糖や持続可能な方法で調達された原料を使って材料を合成している。しかし、性質が悪いことが多いので、商業的な応用には使えない」と指摘しています。…

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