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洗濯洗剤から発見された酵素がプラスチックのリサイクルに役立つ?

化学者らは、少し化学的に調整するだけで、2日以内に使い捨てのバイオプラスチックを構成要素に分解する強力な酵素を作り出しました。 文:Anthropocene Team 2024年2月1日 キングス・カレッジ・ロンドンの研究者らが、プラスチックをリサイクルするための構成要素に分解する方法を発見しました。このプロセスは40時間もかからず、バイオベースの洗濯洗剤によく含まれる酵素を使用します。 Cell Reports Physical Science誌で報告されたこのプロセスは、ポリ乳酸(PLA)と呼ばれる使い捨てプラスチックをリサイクルする効率的な方法につながる可能性があります。化学が専門のAlex Brogan教授は、「ポリ乳酸を選んだのは、このプラスチックに適切なリサイクル方法がないからだ。私たちの開発によって、このプラスチックは90℃で40時間以内に構成要素に変換することができた」と言っています。 PLAはトウモロコシのデンプンやサトウキビといった再生可能な資源から作られますが、石油由来のプラスチックと同様に大きな環境問題となっています。PLAは最も一般的な商業用バイオプラスチックで、2021年には世界で45万7000トンが生産され、主に使い捨ての食品容器、カップ、食器に使用されています。 これらのプラスチックのほとんどは、生分解されない埋立地に送られてしまいます。PLAが生分解されるのは工業用堆肥の中でだけで、60℃で分解されるのに12週間かかります。このため、工業用堆肥は「プラスチックを肥料や敷きわら(Mulch)に変えるという、かなりエネルギー集約的で時間のかかるプロセスになる」とBrogan教授は指摘します。 プラスチックのリサイクルを含め、あらゆる工業処理に酵素を使用することは、他の化学薬品よりも効率的であるため魅力的です。しかし、特にプラスチックの分解に必要な比較的高い温度では、酵素は不安定になるという課題もあります。 そこで研究者らは、この仕事に適した酵素を探すことにしました。医療用インプラントに関する文献に目を向け、インプラントにも一般的に使用されているPLAを分解する「問題のある」酵素を見つけました。「この「問題 」を…

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ラッコが荒廃した海岸線を回復させる

新しい研究によってラッコが海岸の浸食を遅らせることが実証されました。これは頂点捕食者の再導入が広範囲に利点をもたらすことを示しています。  文:Warren Cornwall 2024年2月7日 イエローストーンのオオカミの奇跡については多くの人が知っています。1990年代半ばにオオカミがイエローストーン国立公園に再導入されると、制御不能になったエルクの群れによって採食され無精ひげを生やされた渓流沿いの茂みが回復し始めました。その結果、河岸の浸食は減少し、小川沿いの緑を好む鳴禽類などの生物も戻ってきました。さらにその近くではアスペンが繁茂しました。 エルクの個体数を減らしたことにオオカミがこの変化にどの程度関係しているのか、またどの程度がエルクの行動が微妙に変化したによるのかということについては議論があるものの、全体的な変化は劇的なものでした。一種類のカリスマ的な捕食者の復活が生態系全体に波及するという考えに人々は魅了されたのです。その結果はナショナル・ジオグラフィック誌などで大々的に報じられました。 しかし、ラッコと塩性湿地については聞いたことがありますか?おそらくないと思います。 その豪華な毛皮のために絶滅寸前まで狩られたこの沿岸哺乳類、ラッコが、急速に失われつつある塩性湿地でオオカミのような役割を果たしていることが、新しい研究で判明しました。この発見は、頂点捕食者が持つ変幻自在の能力と、その復活によってもたらされる生態系への潜在的な恩恵を浮き彫りにしています。 「これは疑問を投げかけるものだ。かつて頂点捕食者であった種を再導入することで同様の利益をもたらす可能性がある生態系は、世界中にどれだけあるだろうか」と、この研究に携わったデューク大学の生態学者、Brian Silliman氏は言います。 この研究では、カリフォルニア州モントレー湾の端にある潮の満ち引きの激しい河口、エルクホーンスラウ(Elkhorn Slough)に焦点を当てました。1956年から2003年の間に、この地域は塩性湿地の50%を失っています。 このような塩性湿地は、海岸線が海に浸食されるのを防ぐために不可欠であり、世界中で減少の一途をたどっています。このような被害は、人間の手によって沿岸の水の流れが変化したこと、海が上昇したこと、そして湿地帯の植物の根を弱らせる栄養塩汚染が重なったことが原因とされることが多くあります。 しかしエルクホーンスラウではラッコが復活したことが、彼らが以前に姿を消したことも一因であった可能性を示唆しています。以前は30万頭ものラッコが、バハ・カリフォルニアからアリューシャン列島までの北米西部の沿岸海域を泳いでいました。しかし1700年代にヨーロッパ人によって始められた毛皮貿易によって絶滅寸前にまで追い込まれ、1900年代初頭にはその数はわずか数千頭にまで減少しました。カリフォルニア沿岸に生息していたミナミラッコは、1900年代初頭にわずかに発見されるまでは絶滅したと考えられていました。 1900年代後半、保護団体と政府機関は絶滅危惧種保護法で保護されているミナミラッコを復活される取り組みに着手しました。モントレー湾では、モントレー湾水族館が引き取った親のいない若いラッコを放す場所として、エルクホーンスラウを選びました。…

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エンジニアが光で二酸化炭素を回収する方法を発見

二酸化炭素は酸性溶液とアルカリ性溶液で異なる形態を取ります。この超高速の新しい炭素除去技術は光を使って酸性をコントロールすることで、その利点を活用しています。 文: Anthropocene Team 2024年1月18日 国連は気候変動に関する目標を達成するためには二酸化炭素を回収することが重要であると認識しており、世界中で大規模な二酸化炭素の回収に向けた取り組みが進められています。しかし、この技術は依然として高価でエネルギーを大量に消費します。 今回、研究者らは光と特殊な光トリガー分子を用いて混合物から二酸化炭素を取り出す方法を発表しました。Chemistry of Materials誌で報告されたこの方法は、太陽光を動力源とすることができ、温室効果ガスを回収するのに必要なエネルギーを削減することができます。 科学界は何十年もの間、二酸化炭素を回収する技術に取り組んできました。現在、世界中で30件の商業規模の炭素回収プロジェクトが稼動しており、さらに11件が建設中です。 これらのプロジェクトは、二酸化炭素を吸収する液体または固体の材料を使用して、発電所や産業施設で排出された二酸化炭素を回収しています。しかしその材料には費用がかかります。また再利用するためには二酸化炭素を除去するために加熱する必要があり、その後、二酸化炭素は貯蔵されるか化学物質の製造に使用されます。 チューリッヒ工科大学のMaria Lukatskaya教授(電気化学エネルギーシステム)らは、二酸化炭素が酸性溶液とアルカリ性溶液で異なる形態をとることを活用した新しい炭素除去技術を開発しました。二酸化炭素は、酸性の溶液中では二酸化炭素の形で留まる一方、アルカリ性の溶液中では反応して炭酸塩を形成します。 この化学反応は可逆的で、液体の酸性度を逆にすることで切り替えることができます。さらに研究者たちは、光を使って酸性度を切り替える方法を発見しました。光酸と呼ばれる特殊な光活性分子を加え、光を当てると液体が酸性になるようにしたのです。暗くなると元の状態に戻り、液体はアルカリ性になります。 そのため、混合ガスから二酸化炭素を回収するために、研究チームはまず、暗いところで光酸を含む液体に混合ガスを通します。アルカリ性溶液は二酸化炭素が炭酸塩を形成するように働きかけます。液体中に炭酸塩が十分に存在するようになったら、光を照射します。すると溶液が酸性に傾き、炭酸塩が二酸化炭素に変化し、気泡となって出てくるので、それを回収することができます。そして再度このサイクルを繰り返すのです。 このプロセスは太陽光でもうまくいくはずだと研究者たちは言っています。また、数秒から数分で酸性度が逆転するので、熱駆動のアプローチに比べてこのサイクルは速く二酸化炭素を回収することができます。…

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科学者ら、より鮮明なデータを得るために奮闘。生物多様性のデータは過去の不公平によって歪められている?

新たな国際協定は生物多様性を保護するために年間300億ドルの拠出を約束しています。データに基づく決定は、これまでの罠を回避できるのでしょうか? 文:Warren Cornwall 2024年1月4日 世界中の生物多様性マップは世界に生息する動植物を反映するだけではありません。不正の遺産を含め、私たちの生物に関するイメージを形作る人類の歴史を映し出します。 これはつまり、裕福な国でより多くの科学者が調査しているので、種の発見がそのような国に偏っているということを指します。例えば、北米、ヨーロッパ、オーストラリアが注目されるのは、そのような背景があるためです。 社会的な混乱が事態を歪めることもあります。東南アジアのカンボジアでは、1970年代から80年代にかけて、内戦とクメール・ルージュ政権による殺人によって生態系が崩壊しました。 地域レベルでも、過去の差別が自然豊かな地域に影響を与えることがあります。米国では、レッドライニングとして知られるように、特定の地域に家を購入できる人を人種差別的に制限していました。より白人が多く、裕福な地域ほど緑地が多く、その結果、目撃される鳥の数はおよそ2倍になったのです。 生物多様性の減少を食い止める取り組みが政府や自然保護団体から支持される中、一部の科学者は、注意しなければ多くの人が活用する生物多様性データによって、この不公平の遺産がさらに広がる可能性があると警告しています。 「生物多様性データは、種の分布だけでなく、都市や道路、監視技術の台頭、植民地時代の歴史の影、現代の人種的・経済的不公平の反響をも記録している」と、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の国立生態系分析・統合センター(National Center for Ecological Analysis and…

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世界初の地図が作物残渣からのバイオ炭が約5億1,000万トンの炭素を閉じ込められることを示す

これは研究者たちの控えめな見積もりです。 文: Emma Bryce 2023年11月17日 世界中の何千もの農地に散在する作物残渣は、気候変動に対する思いがけない秘密兵器になるかもしれません。これらの残渣の殻、根、葉を、炭素を閉じ込めることが出来るバイオ炭に変えることで、今後100年間、地球全体の温室効果ガス排出量の3~7%を封じ込めることができます。 最近の新しい研究によるこの驚くべき発見は、実際、再利用された作物残渣が秘めている可能性が非常に強力であることを示しており、ブータン、インド、ガーナなどの国々は、現在の温室効果ガス排出量の40%以上をバイオ炭で埋め合わせることができることを示しています。 作物残渣の多くは、農地に放置され分解されるか、焼却されて大気中に排出されます。しかし、この原料をバイオ炭に変える技術は存在します。それは熱分解(有機物を高熱で酸素を制限した状態で燃焼させ、炭素が豊富な炭のような残渣を作るプロセス)です。作物残渣は熱分解されると新鮮な植物が腐る時よりも長い期間炭素を封じ込めることができます。そして、バイオ炭を土壌に混ぜると、さらに数十年にわたって炭素を封じ込めることができるのです。 小規模なスケールでバイオ炭の可能性は多くの研究によって示されてきましたが、産業規模で生産される世界中の農業廃棄物の可能性はこれまで明らかになっていませんでした。GCB Bioenergy誌に寄稿した研究チームは、国際的な農作物生産に関する大規模なデータセットを基に分析を行い、農業残渣の世界地図を高解像度で作成しました。研究チームは、バイオ炭にすることができる残渣を作り出す34の作物について調査しました。その中には麦わら、籾殻、果物の皮まで含まれています。 もし残渣をすべて活用し、バイオ炭に変えたとしたら、可能性は非常に大きなものになります。研究者らは、このような農業廃棄物を利用すれば、毎年10億トンの炭素を土壌に固定できると見積もっています。バイオ炭は、その土地の気候の暑さ(より速くなる)や涼しさ(より遅くなる)によって分解速度が異なります。こうした変数を考慮し、科学者らは、10億トンのうち72%は100年後も土壌に固定されると結論付けました。驚くべきことに、これは2019年における世界の農業による総排出量の45%に相当する量であると研究によりわかったのです。 しかし現実には、農業残渣の大部分は、ただそこにあるだけではなく、収穫時に失われたり、家畜の飼料や敷料に使われたりしています。バイオ炭の潜在的な炭素固定化能力は、このような現実を考慮すると、年間約5億1,000万トンまで減少することがわかりました。 これは急減のように見えるかもしれませんが、それでも膨大な量であることに変わりありません。バイオ炭の可能性は国別のデータでよく見えてきます。 例えば、ブータンが利用可能な作物残渣をバイオ炭に転換すれば、国内排出量の68%に相当する量を固定化することができます。世界第3位の排出国であるインドでは53%、ガーナでは44%、ブルガリアでは39%、ルワンダでは3分の1以上に相当する量が固定できます。 つまり、温室効果ガスの排出量を削減するための国家対策として、あるいは世界的な気候目標に向けた各国の国別貢献の一環として、バイオ炭は明確な可能性を秘めています。 研究者らの控えめな試算によれば、地球規模では、使われなければ燃やされてしまうかもしれない広く利用可能な資源を使うこのアプローチひとつで、世界全体の排出量の少なくとも3%を抑制することができます。…

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レーザー、水、空気を使い、肥料が全く新しいサステナブルな段階に

この発見には、従来の方法よりも約40倍も効率的に肥料を作ることができる、空気を発するレーザーが関係しています。 文: Emma Bryce 2023年11月24日 工業的規模で食料を栽培するには肥料が必要です。しかしこの肥料は、農業において最も二酸化炭素を多く排出するもののひとつです。これは、研究者らが以前から解決しようとしてきた、二律背反の状況です。現在、オーストラリアと中国の科学者チームは、その答えを見つけたと発表しています。それは、排出量を多く発生する従来の肥料のような高熱と高圧を使わずに、肥料の主要成分であるアンモニアを製造する方法です。 現在の合成アンモニアのほとんどは、1950年代に緑の革命と工業的農業の基礎を築いたハーバー・ボッシュ法を使って製造されています。この方法は、大気の約78%を形成する豊富な窒素を利用することで機能します。 しかし、窒素は3つの結合で強力に融合した2つの原子で構成されています。この結合は高圧下でしか分解できず、アンモニアを生成するためには莫大なエネルギーが必要となります。実際、従来のアンモニア製造には400℃以上の温度が必要であり、アンモニア1トンあたり2.4トンのCO2を排出します。毎年、世界全体の排出量の2%を占める巨大な数字です。このエネルギー多消費型プロセスは、世界のガス埋蔵量の5%を毎年消費しています。 「気候変動に対する意識が高まるにつれ、化石燃料に大きく依存しない、二酸化炭素排出量の少ない代替肥料に対する需要が高まっている」と研究者らは新しい研究の中で書いています。この新しい研究は、アンモニアをより効率的に生産することに成功した以前の研究を基礎としたものだが、研究者たちは、この新しい研究はまったく新しいレベルに達したと述べている。 それは、レーザー、水、空気という重要な材料と、極めて高度な化学との組み合わせによるものです。まず研究者らは、パルスレーザーを使って空気を吹き飛ばし、プラズマ、すなわち高度に活性化された空気を作りました。このプロセスによって、研究者たちは空気中に豊富にある窒素を、窒素と酸素から作られる化合物である硝酸塩に変えることができました。このようにして生成した硝酸塩は不安定で、分子内の結合の1つが切断されやすいことがキーポイントです。つまり、壊すのに必要なエネルギーが少なくて済むということになります。 実験はまだ終わっていません。アンモニア(NH3)を作るには、硝酸塩から1つの酸素原子を捨てて水素に置き換える必要があります。これを研究者らは水と接触させることで実現しました。 それ自体、驚くべきことです。しかし、研究者らによれば、このプロセスにおける本当の発見は、レーザーを使ってナノ秒の速さで空気を吹き飛ばすことによって、このプロセスを急速にスケールアップすることに成功したということです。これによって硫酸塩が効率的に水中に拡散し、アンモニアを大量に生成することが出来るのです。実際、このプロセスでは、従来のハーバー・ボッシュ法と比較して、約40倍のアンモニアが、わずかなエネルギーコストで生産することが出来ました。 興味深いことに、研究者らが以前の論文で研究した技術は、オーストラリアのある企業との契約に繋がりました。そして今回の新たな発見は、より高いエネルギー効率があるため、この新発明が持続可能な方法であることを証明しています。 農業が気候に与える影響だけでなく、従来のアンモニアをますます持続不可能な資源にしている他の理由からも、この新発明は重要な時期に発表されました。 「アンモニア系肥料は、国際的なサプライチェーンの混乱や地政学的な問題により、危機的な供給不足に陥っており、食料安全保障や生産コストに影響を及ぼしている」と研究者らは指摘しています。 さらに、この技術は従来の肥料生産のような巨大なインフラを必要としないため、生産を農場に分散できるという利点もあります。そのため、肥料を世界中に運ぶために通常必要とされる輸送による、もうひとつの排出源を削減することができます。…

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廃棄物処理は気候変動対策として考えられていなかったが、もはやそうではない

すぐに導入可能な廃棄物処理技術が地球温暖化にどのような効果をもたらすか、研究者らが計算しました。世界で初めての研究です。 文:Sarah DeWeerdt 2023年11月28日 ゴミがより持続可能な方法で処理されるよう迅速に変化していかなければ、パリ協定で定められた気候目標を達成することは難しいと新しい研究が示唆しています。幸い、そのような転換は技術的に十分に可能だと研究が示しています。 「埋立地の改造、有機廃棄物の消化、有機廃棄物の堆肥化など、既存の廃棄物処理技術を使えば、2050年までに世界の都市廃棄物による排出量をネットゼロまで抑制できることがわかった。しかし結果が出るには時間がかかるため、すぐに行動を起こす必要がある」と、研究チームのメンバーであるマレーシア・アモイ大学の持続可能性研究者、 Kok Sin Woon氏は言っています。 都市廃棄物管理は、地球温暖化対策としてあまり注目されていません。しかし、ゴミの分解により、強力な温室効果ガスであるメタンが大量に放出されるため、温暖化対策として検討する価値は大いにあります。 メタンは地球温暖化の原因の約3分の1を占めています。温暖化効果という点では二酸化炭素よりも強力ですが、大気中での半減期は二酸化炭素が120年であるのに対し、メタンは10.5年となっています。 このことは、メタンの排出を削減することで、短期的な気候温暖化を抑えることができることを意味し、さらに世界の炭素収支に余裕を持たせ、製造業や長距離航空などの脱炭素化が難しい産業に対処する時間を稼ぐことができます。 この新しい研究は、都市廃棄物の適切な管理によるメタン排出量の削減が、気候変動目標にどのように貢献できるかを世界で初めて分析しました。 Woon氏らは、1990年から2020年までのゴミ処理施設からの温室効果ガス排出量を、世界の都市廃棄物の85%以上を排出する43カ国で計算しました。また、2020年から2050年にかけて、これらの国がどれだけのゴミを排出する可能性があるか、そしてそれに伴う温室効果ガスの排出量もモデル化しました。 都市廃棄物管理に何らかの変化がなければ、世界のゴミは2020年から2050年の間に320億トンから350億トンの炭素排出量に相当すると研究者らはScience誌に報告しています。しかし、パリ協定が定める1.5℃または2.0℃の範囲内に温暖化を止めるためには、都市廃棄物セクターは110億トンから270億トンの二酸化炭素しか排出できません。 「世界の固形廃棄物セクターは気候目標の達成に遅れている」とWoon氏は言います。パリ協定の下でも、2020年から2030年の間にメタン排出量を30%削減するという100カ国以上が署名した「グローバル・メタン・プレッジ」においても遅れていると指摘します。…

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世界はすでに太陽光発電の転換点を超えている

化石燃料の支配が続くことを 「いつも通り 」のシナリオと考えるのはもはや意味がないことを、新たな研究が示唆しています。 文:Sarah DeWeerdt 2023年10月24日 新しい研究は、太陽光発電(PV)が2050年までに世界で主要な電源になる可能性が高いと示しています。少なくとも4つの障壁が残っており、それが太陽光発電の台頭を頓挫させ、化石燃料の使用を継続させる可能性があるものの、追加的な気候政策がなくても、このシフトは起こりそうだと分析しています。 「太陽光発電を促進する歴史的な政策によって、コストは下がってきた。現在では、コスト低下と導入拡大の好循環が、太陽光発電を対象としたより野心的な政策を必要としないところまで来ている」と、研究チームのメンバーである英国エクセター大学の気候・エネルギーシステム研究者、Femke Nijsse氏は言っています。また、「他の自然エネルギーに対するより野心的な政策はまだ必要だ」とも指摘しています。 過去10年半の間に、ソーラーパネルと風力発電のコストは急落しました。研究者らは、自然エネルギーがコストだけで化石燃料のエネルギー源に打ち勝つ「転換点」について議論し始めていましたが、それがいつ、どのように起こるかについての合意はほとんどありませんでした。 その結果、世界のエネルギーシステムのモデルは、一般的に化石燃料の優位が続くと想定してきました。過去のモデルは、世界での太陽光発電の成長速度を常に過小評価してもいたのです。 Nijsse氏らは、グリーン技術の拡大とコスト低下の好循環を組み込んだ3つのモデルを用いて、世界のエネルギーシステムを分析しました。これらのモデルは、2060年までのさまざまなエネルギー技術の普及を予測するために、世界の技術データと経済データを使用しています。 研究者らは、太陽光発電が2030年ごろから風力発電を上回り、2050年には世界的に主要なエネルギー技術になる可能性が高い、とNature Communications誌に報告しています。 この研究結果は、再生可能エネルギーへの急速な移行が、化石燃料に依存し続けるよりもはるかに低コストであることを示唆した昨年の研究結果と呼応しています。この新しい研究は、化石燃料の支配が続くことを「いつも通り(ビジネス・アズ・ユージュアル)」のシナリオと考えるのはもはや意味がないことを示唆しています。…

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コットンの気候への影響は、洗濯の頻度と着用期間によって変わる

世界で最も一般的な天然繊維であるコットンの栽培、製造、使用による気候への影響を新しい研究が評価しました。 文:Sarah DeWeerdt 2023年10月10日 何を着るかは、事実上、誰もが何度も決断できる、そして実際に決断しなければならない消費者の決断です。しかし新しい研究によると、コットン衣料に関する多くの持続可能性研究は、消費者がどのように衣料を着用し、どのように手入れをするかということを無視してきました。 コットンは衣類に最もよく使われる天然繊維で、世界の繊維の約4分の1を占めています。「コットンは85の国と地域の3,000万ヘクタール以上の農地で栽培されており、すべての国と地域の半数以上が国際的な綿織物取引に関与している」と、国際的な研究者チームは学術誌Nature Reviews Earth & Environmentに書いています。 この研究のために、研究チームはこれまでに発表されたライフサイクル分析から、コットン衣料品の生産と使用のさまざまな段階における水の使用、毒性、富栄養化、炭素排出を追跡した証拠を集めました。 多くの影響は細かい部分にあることがわかりました。つまり、コットンがどこで、どのように栽培され、衣服が製造され、人々が長期にわたってどのように着用するかというところです。 例えば、一般的に水使用の大部分はコットンの生産と製造に費やされます。コットンは水を大量に消費する作物であり、多くの地域で水不足の一因となっています。気候変動は将来、こうした課題をさらに悪化させる可能性が多くあります。世界中で栽培されているコットンの約半分は灌漑で栽培されており、繊維製品の染色も水を大量に消費する傾向にあります。これらの工程に比べれば、衣服の洗濯に使われる水は「バケツの一滴」にすぎません。 しかし、電力が多くの炭素を排出する地域では、コットンの衣服の使用段階が生産段階よりも大きなカーボンフットプリントになることが多くあります。米国で一般的なように、洗濯機による乾燥が多い場合は特にそうです。 コットンのジーンズやTシャツの環境フットプリントを減らすには、洗濯の頻度を減らし、タンブラー乾燥ではなく自然乾燥させる(どちらも衣類の寿命を延ばします)、また洗濯機の容量分いっぱいの衣類を少なめの洗剤で洗い、アイロンがけを最小限にすることです。…

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天然スポンジが安価なグリーン電力になるかもしれない

軽量で生分解性のヘチマスポンジは、繰り返し揉むことでLEDに電力を供給するのに十分な電力を生み出すことができます。 文:Prachi Patel 2023年10月5日 ヘチマスポンジはシャワーで肌の角質を除去するために使われる人気のバス用品です。しかし、このスポンジに特殊な化学処理を施すと、絞ったときにLEDを点灯させるのに十分な電力を発生させることができると、研究者らが米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)で発表しました。 この開発は、小型センサーやデバイスのための持続可能で低コスト、かつ生分解性の電源になる可能性がある、と北京航空航天大学(Beihang University)のLi-Hua Shao教授(航空科学・工学)は言います。 この進歩の背景にあるのは、ある種の材料がたわんだり動いたりするときに電力を発生する圧電性という能力です。最も一般的に知られている圧電結晶である水晶は、時計やマイクに使われています。ほとんどの圧電材料は通常、微量の電荷を発生します。しかし、研究者らは最近、木材を化学的に改良してスポンジ状にすることで、圧電出力を高める方法を発見しました。…

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環境に優しいナイロンを技術者らが開発中

電気化学とバクテリアを組み合わせて、あるチームが植物廃棄物からナイロンの構成要素を作り出しました。その過程ではエネルギー使用と温室効果ガスの排出も削減されています。 文:Prachi Patel 2023年7月13日 世界では毎年200万トン以上のナイロンが生産されています。衣服、ロープ、漁網、パラシュートなどに使われるこのナイロンは、現在、膨大なエネルギーを使って石油由来の原料から作られています。 そこで、この問題への取り組みとして、研究者らはナイロンの主要な構成要素を植物由来の原料から作る方法を開発したと報告しています。Green Chemistry誌で報告されたこの方法は、低エネルギーの化学プロセスとバクテリアによる化学物質の変換を組み合わせたもので、ナイロン製造のエネルギー使用量と温室効果ガス排出量を削減できる可能性があります。 ナイロンは2つの化学成分を50対50で混合したものです。そのひとつがアジピン酸で、石油由来のフェノールを使って2段階の化学プロセスで作られます。第1段階は高温と刺激性の強い化学薬品を必要とするエネルギー集約型のプロセスで、フェノールをシクロヘキサノールに変換します。第2段階は、シクロヘキサノールをアジピン酸に変換する工程で、笑気ガスとしても知られる亜酸化窒素を大量に放出します。亜酸化窒素は二酸化炭素より温室効果係数が300倍も強い温室効果ガスであり、それに加えて大気中のオゾン層を破壊します。 ドイツのヘルムホルツ環境研究センターとライプツィヒ大学の研究チームは、ナイロンの生産工程全体を環境に優しいものにしたいと考えました。「バイオ由来の廃棄物を原料として利用し、合成プロセスを持続可能なものにすれば可能だ」と、電気生物工学のFalk Harnisch教授は指摘します。 研究者らはまず、化石由来のフェノールを生物由来のフェノール類に置き換えることから始めました。これはリグニンに由来するカテコールやグアイアコールといった化学物質で、植物に強度を与える繊維状の成分で、パルプ・製紙産業の廃棄物となるものです。 これらのバイオベースのフェノール類をシクロヘキサノールに変換するために、従来のように熱と水素を使うのではなく、電気と特殊な炭素ベースの触媒を使用します。これにより、エネルギー使用量が削減され、再生可能エネルギーを用いることも可能です。このプロセスでは、化学物質の70%以上がシクロヘキサノールに変換されます。そして研究チームは、シュードモナス・タイワンエンシス(Pseudomonas taiwanensis)というバクテリアを使って、シクロヘキサノールをアジピン酸に変換します。 この工程にかかる時間は22時間で、リグニン由来のフェノール類からアジピン酸までの収率は57%です。 今年初め、アパレル企業のルルレモン(Lululemon)は植物由来のナイロンでできたシャツの販売を開始しました。バイオテクノロジー企業のジェノ社(Geno)は、バクテリアを使ってグルコースやスクロースなどの植物性糖類を発酵させ、ナイロンを製造しています。「この植物由来の原料は、人間との食料の奪い合いや、飼料や土地利用の対立を生むかもしれない」とHarnisch教授は指摘します。…

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新しく開発された大腸菌が廃水から電気を生み出す

微生物を動力源とする新たなデバイスで廃水処理装置を改良する過程で、エンジニアらが一般的なバクテリアを用いて電力を作り出すことに成功しました。 文:Prachi Patel 2023年9月14日 研究者らは一般的な微生物である大腸菌に遺伝子操作を行い、廃水を含む幅広い一般的な資源から電気を生産させることに成功しました。Joule誌で発表されたこの研究結果は、廃水処理のプロセスにエネルギー生産という価値を加える可能性があります。 従来の廃水処理施設は大量のエネルギーを消費し、温室効果ガスの約3%を排出しています。バクテリアを使って廃水を電気に変換する技術は、環境への影響を軽減する可能性があります。 「私たちの技術は、一般的な微生物である大腸菌を利用しているため、世界中のどこでも、さまざまな廃棄物を利用して、この技術を応用することができる」とスイスのローザンヌ工科大学(EPFL)応用科学・工学研究所(Institute of Chemical Sciences and Engineering)のArdemis Boghossian教授は言います。 さらに、この発見は「バイオエレクトロニクスにとって重要な意味を持つ。生きた微生物から電力を供給する電子機器を作ることができ、その用途はほぼ無限大である」と指摘します。 バクテリアは有機物(炭素を含む化合物)を分解して他の化学物質に変えることができます。科学者らは、このバクテリアの能力を利用して、人間の排泄物を燃料に変えたり、糖を消化して燃料や薬物、ナイロンなどのプラスチックの構成要素を作ることができる特殊なタイプの微生物を設計したりしています。…

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