洗濯洗剤から発見された酵素がプラスチックのリサイクルに役立つ?

化学者らは、少し化学的に調整するだけで、2日以内に使い捨てのバイオプラスチックを構成要素に分解する強力な酵素を作り出しました。

文:Anthropocene Team
2024年2月1日

キングス・カレッジ・ロンドンの研究者らが、プラスチックをリサイクルするための構成要素に分解する方法を発見しました。このプロセスは40時間もかからず、バイオベースの洗濯洗剤によく含まれる酵素を使用します。

Cell Reports Physical Scienceで報告されたこのプロセスは、ポリ乳酸(PLA)と呼ばれる使い捨てプラスチックをリサイクルする効率的な方法につながる可能性があります。化学が専門のAlex Brogan教授は、「ポリ乳酸を選んだのは、このプラスチックに適切なリサイクル方法がないからだ。私たちの開発によって、このプラスチックは90℃で40時間以内に構成要素に変換することができた」と言っています。

PLAはトウモロコシのデンプンやサトウキビといった再生可能な資源から作られますが、石油由来のプラスチックと同様に大きな環境問題となっています。PLAは最も一般的な商業用バイオプラスチックで、2021年には世界で45万7000トンが生産され、主に使い捨ての食品容器、カップ、食器に使用されています。

これらのプラスチックのほとんどは、生分解されない埋立地に送られてしまいます。PLAが生分解されるのは工業用堆肥の中でだけで、60℃で分解されるのに12週間かかります。このため、工業用堆肥は「プラスチックを肥料や敷きわら(Mulch)に変えるという、かなりエネルギー集約的で時間のかかるプロセスになる」とBrogan教授は指摘します。

プラスチックのリサイクルを含め、あらゆる工業処理に酵素を使用することは、他の化学薬品よりも効率的であるため魅力的です。しかし、特にプラスチックの分解に必要な比較的高い温度では、酵素は不安定になるという課題もあります。

そこで研究者らは、この仕事に適した酵素を探すことにしました。医療用インプラントに関する文献に目を向け、インプラントにも一般的に使用されているPLAを分解する「問題のある」酵素を見つけました。「この「問題 」を 「利点 」に変えたのだ」と教授は言います。

彼らが選んだ酵素はカンジダ・アンタークティカ由来リパーゼB(CaLB)で、洗濯洗剤によく含まれるどこにでもある酵素です。研究者らは、イオン液体と呼ばれる種類の溶媒に溶けて安定するように、この酵素を化学的に改良しました。イオン液体には、一般的なプラスチックを可溶性の断片に変換する能力があり、酵素はこれを分解できます。「私たちの戦略は単純な化学変化であり、理論的には、あらゆる種類のプラスチックに対応できるよう、あらゆる酵素をアップグレードするために使用することができる」とBrogan教授は言います。

研究者らは、改良した酵素をイオン液体に溶かし、PLAプラスチックカップの破片をその溶液に浸しました。プラスチック片は24時間以内に溶液に完全に溶解し、さらに90℃で、破片はプラスチックの構成要素である乳酸に16時間で完全に分解しました。この乳酸は、より多くのプラスチックや他の化学物質を作るのに使うことができます。

「より大規模な作業が可能になるシュレッダーなどのより精密な前処理を加えることで、この工程をどのように改善できるか、エンジニアと協力し検討している」とBrogan教授は言っています。チームはまた、溶液から乳酸を分離する最も効率的な方法を探しています。「私たちが示さなければならない主な改良点は、分解されたプラスチックで再びプラスチックを作り、この資源を循環する(ループを閉じる)ことができるということだ」と教授は指摘します。

出典: Susana M. Meza Huaman, Jake H. Nicholson, Alex P.S. Brogan. A general route to retooling hydrolytic enzymes toward plastic degradation. Cell Reports Physical Science, 2024.

Image: ©Anthropocene Magazine