レーザー、水、空気を使い、肥料が全く新しいサステナブルな段階に

この発見には、従来の方法よりも約40倍も効率的に肥料を作ることができる、空気を発するレーザーが関係しています。

文: Emma Bryce
2023年11月24日

工業的規模で食料を栽培するには肥料が必要です。しかしこの肥料は、農業において最も二酸化炭素を多く排出するもののひとつです。これは、研究者らが以前から解決しようとしてきた、二律背反の状況です。現在、オーストラリアと中国の科学者チームは、その答えを見つけたと発表しています。それは、排出量を多く発生する従来の肥料のような高熱と高圧を使わずに、肥料の主要成分であるアンモニアを製造する方法です。

現在の合成アンモニアのほとんどは、1950年代に緑の革命と工業的農業の基礎を築いたハーバー・ボッシュ法を使って製造されています。この方法は、大気の約78%を形成する豊富な窒素を利用することで機能します。

しかし、窒素は3つの結合で強力に融合した2つの原子で構成されています。この結合は高圧下でしか分解できず、アンモニアを生成するためには莫大なエネルギーが必要となります。実際、従来のアンモニア製造には400℃以上の温度が必要であり、アンモニア1トンあたり2.4トンのCO2を排出します。毎年、世界全体の排出量の2%を占める巨大な数字です。このエネルギー多消費型プロセスは、世界のガス埋蔵量の5%を毎年消費しています。

「気候変動に対する意識が高まるにつれ、化石燃料に大きく依存しない、二酸化炭素排出量の少ない代替肥料に対する需要が高まっている」と研究者らは新しい研究の中で書いています。この新しい研究は、アンモニアをより効率的に生産することに成功した以前の研究を基礎としたものだが、研究者たちは、この新しい研究はまったく新しいレベルに達したと述べている。

それは、レーザー、水、空気という重要な材料と、極めて高度な化学との組み合わせによるものです。まず研究者らは、パルスレーザーを使って空気を吹き飛ばし、プラズマ、すなわち高度に活性化された空気を作りました。このプロセスによって、研究者たちは空気中に豊富にある窒素を、窒素と酸素から作られる化合物である硝酸塩に変えることができました。このようにして生成した硝酸塩は不安定で、分子内の結合の1つが切断されやすいことがキーポイントです。つまり、壊すのに必要なエネルギーが少なくて済むということになります。

実験はまだ終わっていません。アンモニア(NH3)を作るには、硝酸塩から1つの酸素原子を捨てて水素に置き換える必要があります。これを研究者らは水と接触させることで実現しました。

それ自体、驚くべきことです。しかし、研究者らによれば、このプロセスにおける本当の発見は、レーザーを使ってナノ秒の速さで空気を吹き飛ばすことによって、このプロセスを急速にスケールアップすることに成功したということです。これによって硫酸塩が効率的に水中に拡散し、アンモニアを大量に生成することが出来るのです。実際、このプロセスでは、従来のハーバー・ボッシュ法と比較して、約40倍のアンモニアが、わずかなエネルギーコストで生産することが出来ました。

興味深いことに、研究者らが以前の論文で研究した技術は、オーストラリアのある企業との契約に繋がりました。そして今回の新たな発見は、より高いエネルギー効率があるため、この新発明が持続可能な方法であることを証明しています。

農業が気候に与える影響だけでなく、従来のアンモニアをますます持続不可能な資源にしている他の理由からも、この新発明は重要な時期に発表されました。 「アンモニア系肥料は、国際的なサプライチェーンの混乱や地政学的な問題により、危機的な供給不足に陥っており、食料安全保障や生産コストに影響を及ぼしている」と研究者らは指摘しています。

さらに、この技術は従来の肥料生産のような巨大なインフラを必要としないため、生産を農場に分散できるという利点もあります。そのため、肥料を世界中に運ぶために通常必要とされる輸送による、もうひとつの排出源を削減することができます。

研究チームは以前の研究について 「地域で使う肥料を地域で作り、必要な分だけ作ることができれば、地球の健康や社会にとっても大きなメリットがある」と言っています。

出典: Jalili et. al. “Sustainable ammonia production via nanosecond-pulsed plasma oxidation and electrocatalytic reduction.” Applied Catalysis B: Environmental. 2023.