気候科学における10の最新インサイト発表:1.5℃のオーバーシュート最小化には化石燃料の迅速かつ段階的廃止が不可欠

Future Earthは12月3日、ドバイ(アラブ首長国連邦)で開催の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)にて、「気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」(10 New Insights in Climate Science: 10NICS) 2023/2024を発表しました。

10NICS 2023/24は、COP28での交渉や2024年以降の政策実施の参考となるよう、過去1年半の最新かつ最も重要な気候科学研究を統合したもので、ビジネスや政策の意思決定者にとって不可欠な科学的根拠を提供しています。特に、COP28における第1回グローバル・ストックテイクを背景に、パリ協定の1.5℃という温暖化目標をオーバーシュートすることは不可避であり、化石燃料の段階的廃止への迅速な取り組みや社会変容に向けた行動が急務であると強調してます。

10NICSシリーズは、Future Earth、Earth League、世界気候研究計画の共同イニシアチブで、2017年のUNFCCC COPから始まりました。今年の報告書は、24カ国67名の第一線の研究者の総力を結集し作成されました。日本からは下記の専門家が執筆や調整に貢献しています(敬称略)。

  • Gregory Trencher(京都大学)
  • Prabir K Patra(海洋研究開発機構/総合地球環境学研究所)
  • Steven McGreevy (University of Twente/総合地球環境学研究所)
  • Giles B. Sioen(国立環境研究所/Future Earth国際事務局日本ハブ)
  • Sunhee Suk(長崎大学/Future Earth国際事務局日本ハブ)

10NICS2023/24は、次の10のメッセージを取り上げています。

<12 月13日(水)午後2-3:30、下記10のテーマについて執筆者らが解説するイベントが開催されます。詳しくはこちらをご覧ください。>

  1. 1.5℃目標のオーバーシュートは避けられない状況になりつつある。オーバーシュートの度合と期間を最小限に抑えることが必要不可欠である
  2. パリ協定の目標を達成するには、迅速で計画的な化石燃料の段階的な廃止が必要である
  3. 二酸化炭素除去(CDR)を必要とされる規模にするため、強固な政策が不可欠である
  4. 自然䛾炭素吸収源に過度に依存するのは際どい戦略である: 将来の貢献度は不確かである
  5. 気候と生物多様性の非常事態は相互に関連しているため、共同ガバナンスが必要である
  6. 複合現象は気候リスクを増大させ、その不確実性を増加させる
  7. 山岳氷河の縮小が加速している
  8. 気候リスクのある地域において移動が難しい状況が拡大している
  9. 正義が機能する新たな手法の導入により、より効果的な気候変動適応が可能となる
  10. フードシステムの改革は公正な気候変動対策に貢献することができる

発表記者会見は12月3日、COP28会場で行われ、UNFCCC事務局長サイモン・スティール氏は、「10NICS報告書は、毎年気候に関するカレンダーの重要な時期に、意思決定者にとって不可欠なツールとなる。このような報告書から得られる科学的知見は、気候変動対策を加速させるこの重要な10年間に必要な、野心的でエビデンスに基づいた行動計画に反映されるべきものである」とコメントを寄せています。

記者会見はこちらからご覧いただけます。

本政策報告書のもとになった論文がケンブリッジ大学出版局 “Global Sustainability”誌にオンライン掲載されました。(査読済み。ジャーナルによる書式設定はまだ行われていませんのでご注意ください。)