絶滅危惧種を対象に「逆報酬制度」を導入した結果、科学者たちの意図とは逆の結果に

報酬を受け取って絶滅の危機に瀕している魚種を放流していたインドネシアの漁師たちを調査したところ、このプログラムは実際に魚の死をより多く引き起こしていたことがわかりました。

文: Warren Cornwall
2025年4月23日

自然保護において、経済市場は強力な力を持っています。サイの角の闇取引から、金、木材、農地を求めることで世界の熱帯雨林を荒廃させることなど、利益を追求することが今日の絶滅危機の主な原動力となっています。

自然保護活動家たちは、生物多様性保護という名目で、人々が自然界を略奪するのではなく、保護するための金銭的なインセンティブを提供することで、同じ力を利用しようとし始めています。

しかし、株式トレーダーなら誰でも言うように、市場の複雑さと予測不可能性には気をつけなければなりません。時には、望んだ結果とは正反対の結果になることもあるからです。

その一例が、絶滅の危機に瀕したサメやエイを保護するため、漁師に報酬を支払って無傷で放流することを目的としたインドネシアのプログラムです。この取り組みがどの程度有効であったかを検証するために実施された調査によると、逆に小規模漁業者がサメやエイの漁獲量を増やし、より多くのサメやエイの絶滅を招いていることが判明しました。

ジョンズ・ホプキンス大学の経済学者および人間行動と公共政策の専門家であり、本研究の共著者であるPaul Ferraro氏は、『Science Advances』に掲載された研究結果が、このような報酬を提供し放流するプログラムが失敗することを示しているものではないと指摘しています。しかし、また同時にこのような取り組みを展開する前に試験的に試す必要性を強調しています。

「地元の漁師によって捕獲された絶滅危惧種のためのリリース報酬制度(放流することで報酬をもらう制度)は、世界中で実施されている。しかし、これらの制度は、絶滅危惧種の漁獲に実際に変化をもたらすかどうか、誰にも問われることなく実施される傾向にある」とFerraro氏は言います。

戦略は簡単です。生計を立てようとする人々によって何かが破壊されているのであれば、その経済的利益に見合うだけのお金を支払うことで、その何かを破壊しないようにすればいいのです。インドネシアの海洋保護団体Kebersamaan Untuk Lautanは研究者と協力し、絶滅の危機に瀕しているシュモクザメとウェッジフィッシュ(エイの一種)の死亡数を減らすよう、5つの村の漁師たちに働きかけました。

国際条約はこれらの魚種の取引を禁止していますが、インドネシアでこの魚を獲る人々に対する同様の法律はありません。インドネシア漁船の90%以上を占める小規模漁業者にとって、意図的に捕獲されることもあれば、偶然「混獲」されることもあるこの魚は、重要な食料源であり収入源でもあります。

保護団体と科学者たちは、絶滅の危機に瀕している魚を保護するよう漁師たちに働きかけるため、魚を海に戻した場合は、漁師にその魚の市場価値に見合う金額を支払うという、一種の逆報酬制度を創設しました。放流が単なる偽装でないことを確認するため、彼らは漁師にビデオカメラを渡し、その映像の信憑性を確認しました。漁師たちは、代金が支払われる前に、動物が水に戻され、泳ぎ去る姿を見せる必要がありました。

一見したところ、このプロジェクトは成功したように見えました。ビデオに収めたリリースの数に基づくと、報酬を受け取って魚を放流した漁師たちによって、ウェッジフィッシュの死亡率が71%減少し、シュモクザメの死亡率が4%減少したことを示していました。保護することに成功していますよね?

しかし実際はそうではなかったのです。科学者たちは、市場原理が働いているかどうかを確かめるため、魚を放流しても報酬をもらっていない近隣の船が捕獲したシュモクザメやウェッジフィッシュの数もモニターしていました。

その結果、報酬をもらっていない漁船は、絶滅の危機に瀕している魚の漁獲量が全体的に少ないことを発見したのです。漁師への聞き取り調査では、放流することで報酬をもらっている漁船は、現金を得るために、より懸命に対象の魚を捕獲していることが明らかになったのです。

これは支払いコストを押し上げる以上の影響はないように見えますが、捕獲され放流された魚の多くは長くは生きられないという大きな問題があります。予想される生存率を考慮した上で、科学者たちは、このプログラムによってウェッジフィッシュの死亡率は25%しか減少せず、驚くべきことにシュモクザメの死亡率は44%も増加したと結論づけました。

「これらの結果は、リリース報酬制度が機能しないということを意味するのではなく、インセンティブに基づく保全プログラムの設計の複雑さと、規模を拡大する前に実験的デザインを使って試験的に実施することの重要性を示している」とFerraro氏はメールに書いています。

漁師の行動パターンから、科学者たちは、ある場所では支払いが低すぎて放流数が少なくなり、別の場所では高すぎて漁獲量が多くなった可能性について考えました。また、漁具の種類によっても成功が妨げられていました。網が広く使われているある地域では、ウェッジフィッシュは絡まったままでも生き延びることができましたが、シュモクザメは酸素を含んだ水をエラに送り込むために動き続けなければならず、窒息するケースが多く見られました。また餌付きの延縄が使用されている他の地域では、漁師が発見するまでに大きな魚が死んでいることが多くありました。

この研究結果はすでに、科学者とNGOにプログラムを調整する必要性を示しています。例えば、魚の価値に見合うように魚の大きさによって支払額を変えたり、漁師が1週間に受け取れる報奨金に上限を設けたり、漁師が漁具を絶滅危惧種の動物に致命的でないものと交換できるようにしたりすることが考えられます。

そうすることで、市場が思ったように動き、この保護戦略の目的を果たすことができるかもしれません。

「インセンティブに基づくプログラムは、効果的かつ社会的に公正な自然保護において重要な役割を果たす。小規模な資源利用者に保全コストの大半を負担させることは期待できない。特に、より裕福で強力な利害関係者が大きな悪影響を及ぼしている場合はなおさらだ」とフィールドワークを担当したオックスフォード大学の博士研究員であるHollie Booth氏は言っています。

出典:Booth, et. al. “Conservation impacts and hidden actions in a randomized trial of a marine pay-to-release program.” Science Advances. April 23, 2025.
画像:A fisher in KUL’s program carefully releases a Critically Endangered wedgefish. ©Francesca Page