海藻の養殖場から炭素クレジットを発行できるのだろうか?
おそらく近いうちに発行できるでしょう。研究者たちが商業的な海藻養殖場の地下にある炭素を直接測定したところ、海草やマングローブが取り込んだ炭素の量に匹敵することがわかりました。
文:Emma Bryce
2025年1月31日
現在、世界中でおよそ2000平方キロメートルの面積を占めるほど海藻養殖場が成長していますが、その養殖場の地下にどれだけの炭素が蓄積されているかということについて、研究者たちが初めて直接推定しました。
『Nature Climate Change』誌に掲載された新たな研究結果によると、多いところでは1ヘクタールあたり140トンもの炭素が海藻養殖場に蓄積されています。平均すると、この量は少ないものの、すでにブルーカーボンクレジットが発行されているエコシステムであるマングローブや海草草原の下に蓄積される炭素に匹敵する量です。
Oceans 2050 Global Seaweed Projectと呼ばれるイニシアチブの一環として、数十人の国際的な研究者が参加したチームは、中国、日本、マダガスカル、アメリカを含む11カ国に点在する20の海藻養殖場の地下から堆積物のコアを採取するのに15カ月を費やしました。海藻は世界各地で食料、肥料、燃料、医薬品として商業的に養殖されています。海藻が成長するにつれ、藻の葉は大量の炭素を取り込み、海藻がバイオマスの断片を排出すると、この炭素の一部は柔らかい海底堆積物に埋もれます。研究者たちがサンプリングした養殖場は、設置されてから2年から320年までの幅があり、砂利質の地盤に根ざしているものもあれば、炭素を蓄積しやすい柔らかい泥質の堆積物に根ざしているものもありました。また、養殖場には、大きな樹木のようなケルプからネオングリーンのアオサまで、さまざまな種が生存していました。
研究者たちは研究の中で、彼らが注目した養殖場はいずれも炭素を取り込むように設計されていなかったので、この食料システムの潜在的な気候変動に関する共同利益(コベネフィット)として炭素貯蔵を計算することに興味を持ったと述べています。
サンプリングの結果、養殖場の堆積物に固定された炭素の量には大きな幅があり、平均すると1ヘクタールあたり年間1.06トンの二酸化炭素換算(CO2e)であることが判明しました。この数字は「余剰炭素」、つまり海藻の成長に起因する固定化された炭素のみをカウントしたもので、その下の海底堆積物に固定された既存の炭素は含まれていません。これは、海藻の養殖業がもたらす実際の環境利益を判断するために不可欠です。
養殖場によっては、1ヘクタールあたり年間8.10トンのCO2eを蓄積しているところもありました。 一般的に、このように多くの炭素を貯蔵しているものは、古い養殖場の地下にあり、より深く細かい堆積物を特徴とする土壌にあり、炭素を固定し、より長い期間その状態を維持するのに最適な条件である穏やかな湾に位置していました。また日本のそのような養殖場の堆積物コアは、長年にわたって1ヘクタールあたり140トンものCO2 eを蓄積していました。
平均的な数値は、研究者たちが言うように「比較的控えめ」なものですが、それでも海藻養殖場の炭素量は、海草草原やマングローブの下に貯留されている炭素量に匹敵することを示しています。養殖場の堆積物1ヘクタールに蓄積される平均1.06トンのCO2eは、他の生態系が蓄積する量の33~39%に相当します。さらに、もし将来の海藻養殖場が高収量で運営され、炭素隔離に最適な場所、例えば穏やかな水湾や細かい堆積物の上などに戦略的に設置された場合、養殖場はその平均値の4倍の炭素を隔離できる可能性があります。
この可能性から、海藻養殖場が、現在他の生態系と一般的に結びつけられているブルーカーボンクレジットの発行対象となる可能性があります。しかし研究者たちは、先走りは禁物だと警告しています。市場が海藻養殖場に開放される前に、少なくとも炭素が平均どのくらいの期間蓄積されるのか、あるいは環境変化などに対してどの程度脆弱なのかを見極める必要があり、さらに多くの研究が必要だと指摘します。
今のところ、海藻養殖を行う理由としてではなく、海藻養殖がすでに提供している食料、収入、海水の浄化、生物多様性の促進などの多くのサービスの共同利益として、炭素隔離に焦点を当てることを提案しています。カーボンクレジットは可能になるかもしれないが、この研究は「その可能性を探るための有益な第一歩」に過ぎないと研究者たちは指摘しています。
出典:Duarte et. al. “Carbon burial in sediments below seaweed farms matches that of Blue Carbon habitats.” Nature Climate Change. 2025.
画像:Wikipedia
DATE
February 20, 2025AUTHOR
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