このバイオプラスチックは、発泡スチロールの悩みを解決する特効薬になるだろうか?

海洋研究所の研究者らが海水で紙よりも速く分解するバイオプラスチックを開発しました。

文:Anthropocene Team
2024年10月24日

地球の広大な海は、人類が排出するプラスチックごみの捨て場となっています。ある試算によれば、毎年480万トンから1,270万トンのプラスチックが海に流れ込んでいます。

従来のプラスチックを海中で分解するものに置き換えれば、海洋生物や環境への影響を減らすことができます。そして今、ウッズホール海洋研究所(Wood Hole Oceanographic Institution: WHOI)の科学者たちが、海水で紙よりもさらに速く分解するバイオプラスチックを開発したと報告しています。

この新素材は、二酢酸セルロース(CDA)と呼ばれるバイオプラスチックの発泡版です。この新素材は、使い捨ての食品包装に使われている発泡スチロールに代わる分解可能で持続可能な素材になる可能性があると研究チームは述べています。

CDAは、植物の細胞壁、 特に木材パルプに含まれる天然ポリマーであるセルロースから作られており、紙の原料にもなっています。このバイオプラスチックは何十年も前から存在しており、タバコのフィルターや写真フィルム、種子コーティングなどに使われています。

WHOIの研究者たちは、これらのバイオプラスチックの発泡版が、その使用用途を広め、また生分解性を高めることができるかどうかを推測しました。CDA発泡体は、一般に発泡スチロールとして知られるポリスチレン(PS)発泡体の持続可能な代替品になりうる、と研究者たちは言っています。発泡スチロールは、食品包装や断熱材として広く使用されていますが、優れたリサイクル技術がないため、そのほとんどが埋め立て処分されています。

研究チームは、『ACS Sustainable Chemistry & Engineering』誌に掲載された新しい研究において、いくつかのCDAと従来のポリスチレン発泡体の海洋劣化を評価しました。そして、研究チームは、分解速度と発泡体の特性の関係を明らかにすることができました。

研究者たちはCDAに小さな孔を開け、さまざまな密度の発泡体を作りました。そしてCDAとポリスチレンの発泡体を海水が絶えず流れる水槽に入れました。36週間にわたる試験で、CDA発泡体は元の質量の約70%を失いましたが、発泡スチロールは劣化ゼロという結果になりました。「CDA発泡体の分解速度は、固体のCDAの約15倍であり、海洋で報告されているどのプラスチックよりも速かった」と研究者らは報告しています。

論文の共著者の中には、バイオプラスチック製造会社であるイーストマン社の関係者もいます。同社は最近、発泡スチロール製トレーの代替となりうる、CDA発泡体のコンポスト可能な軽量食品包装トレーを発表しています。

出典: Bryan D. James et al. Foaming Enables Material-Efficient Bioplastic Products with Minimal Persistence. ACS Sustain. Chem. Eng. 2024.
画像:©Anthropocene Magazine