意外な家電製品がソーラーパネルの製造とリサイクルを容易にする

マイクロ波でシリコン太陽電池を加工すると、高温の炉に比べて時間とエネルギーが少なくて済み、またパネルの分解やリサイクルも容易になります。

文:Prachi Patel
2023年4月27日

過去10年間における太陽光発電の台頭は、気候変動対策のサクセスストーリーとなっています。しかし、太陽光発電には課題もあります。世界中で太陽光発電所が増えるにつれて、将来、大量の廃棄パネルが発生するという問題です。

オーストラリアの研究者らは、ソーラーパネルをリサイクルしやすくするだけでなく、製造コストも下げることができる技術を開発しました。しかも必要なのは台所の電子レンジだけです。

現在のソーラーパネルのほとんどはシリコンでできています。その製造過程で、シリコンは性質を変化させるため、炉の中で900℃以上の高温で加熱されます。そのため、多くのエネルギーが消費されるだけでなく、コストもかかります。オーストラリアの研究チームは、Applied Physics Letters誌に発表した論文で、シリコンを電子レンジで加熱すれば、よりエネルギー効率がよくなるだけでなく、使用後のパネルのリサイクルも容易になると報告しています。

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の太陽光発電容量は2000年の1.4ギガワットから2020年には760ギガワットに増加し、現在では世界の電力の約4パーセントを太陽光発電でまかなっています。

ソーラーパネルの寿命は通常30年程度です。2030年には約800万トンのパネルが寿命を迎えると予測されています。そして2050年には8000万トンになると言われています。

これらのパネルのほとんどは、溶出する可能性のある有毒な鉛を含んでいますが、埋立地に捨てられてしまいます。環境に悪影響を及ぼす可能性があるだけでなく、パネルには貴重な材料が含まれているため、これは資源の無駄遣いでもあります。パネルのリサイクルを義務付けているのは、今のところ欧州連合(EU)のみです。しかし、現在のリサイクル技術には限界があり、エネルギーを大量に消費しています。

マッコーリー大学のBinesh Puthen Veettil氏らは、ソーラーパネルの製造とリサイクルの両方を、より安価でエネルギー消費の少ない方法で行うことを考案しました。研究チームは、台所用の電子レンジを購入し、高温に耐えられるように耐熱処理を施しました。その結果、電子レンジを使えば、太陽電池のシリコンを炉とほぼ同じ効率で加熱・加工できることがわかったのです。マイクロ波がシリコンを選択的に加熱し、ガラスやプラスチック、アルミニウムから成るパネルの残りの部分はほとんど影響を受けませんでした。

さらにこの方法では、電子レンジで加熱することでプラスチックが柔らかくなり、剥がしやすくなるため、太陽電池とガラスをリサイクルすることができます。プラスチックは湿気からパネルを保護するためのものですが、剥がすのは困難です。「これまでは、パネルを埋立地に捨てることは経済的に合理的だった。稀にパネルをリサイクルする場でも、パネルを粉砕し、約1400℃に加熱し、化学薬品で洗浄し、プラスチックを除去する必要があり、非常にエネルギーを多く消費するプロセスだからだ。」とVeettil氏はプレスリリースで述べています。

研究者らは、マイクロ波を使ったリサイクルプロセスについて特許を申請中です。現在、商品化に向けてさらなる改良を進めているとのことです。

出典: Binesh Puthen Veettil et al. Microwave annealing of silicon solar cells. Appl. Phys. Lett. 2023.