使い捨てプラスチックの問題を解決するのは丈夫な紙袋かもしれない

水に濡れた時でも、紙袋を丈夫にする簡単な技術で、より再利用しやすくなり、最後にはバイオ燃料として利用することができます。

文:Prachi Patel
2023年5月4日

研究者は、簡単で安価な方法で、水に濡れても何度でも再利用できるほど丈夫な紙袋を作る技術を発見しました。この紙袋は、使い捨てのビニール袋に代わる、真のエコフレンドリーな袋となるかもしれません。

この耐久性のある紙袋は、最終的には分解してバイオ燃料として利用することができます。主席研究員のJaya Tripathi氏はプレスリリースで、「今回の研究で実証したような技術は(中略)、使い古した袋をバイオ燃料の原料として利用することも含め、その意義は非常に大きい」と述べています。ペンシルベニア州立大学のTripathi氏らはResources, Conservation and Recycling誌にこの研究成果を発表しています。

世界では、年間5兆枚のビニール袋が作られています。1枚の袋が分解されるのに1,000年以上かかると言われています。そのうちのかなりの割合が使われたあと最終的に水路や海に流れ込み、環境を汚染し、野生生物に害を及ぼしています。また、たとえ埋め立てられたとしても、分解されて有害なマイクロプラスチックや有毒化学物質が発生するため、環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

紙袋は再生可能な資源から作られているだけでなく、プラスチック袋よりも分解が早く、動物への危険性もより少なくなります。しかし、だからといって、自然界にとって完全にクリーンな解決策となるわけではありません。

紙袋を作るには多くのエネルギーが必要で、プラスチックよりも重いため、輸送にかかるエネルギーも多くなり、1枚あたりの二酸化炭素排出量も多くなります。紙袋をプラスチック袋より環境にやさしいものにするには、3回から43回再利用する必要があるとの調査結果もあります。

しかも、紙袋は薄く、水分が付着すると耐久性が悪くなるという問題があります。そこでTripathi氏らは、紙をより強くする化学処理を考えました。酸素の少ない状態で紙をゆっくりと加熱するトレファクション(torrefaction)と呼ばれる技術です。これにより、紙のセルロース繊維は撥水性を増し、水に濡れても強くなります。

研究チームは、220℃で40分間加熱すると、紙の強度が2,233%という高い数値で上昇することを発見しました。しかし、強度が増す一方で、トレファクションにより紙に含まれるグルコースの含有量が減少し、バイオ燃料としての有用性が低下してしまいます。

そこで、研究者らは水酸化ナトリウム水溶液で紙を処理することで、グルコースの含有量を増加させ、この課題を解決しました。

これから、この実験結果を実用的な紙袋に反映させる必要があります。しかし、この研究の意義は大いにあります。アメリカ人は、年間1,000億枚の紙袋を捨てています。

「より丈夫で再利用可能な紙の買い物袋に切り替えることで、その廃棄物の多くをなくすことができる」とTripathi氏は述べています。

出典: Jaya Tripathi, Daniel Ciolkosz, and Dan G. Sykes. Torrefied paper as a packaging material and subsequently as a bioethanol substrate: Synergy of torrefaction and alkaline treatment for increased utility. Resources, Conservation and Recycling, 2023.