「気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」2022発表

Future Earthは11月10日、エジプト シャルム・エル・シェイクにて開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)にて、「10 New Insights in Climate Science/気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」(10NICS) 2022年版を発表しました。

10NICS 2022は、主に2021年と2022年に発表された文献を基に、気候変動研究による顕著な10の知見を紹介する報告書です。本報告書は、気候変動と、紛争、パンデミック、食糧危機、根本的な開発課題など、他のリスク要因との相互作用の複雑さを明らかにし、人々と生態系が繁栄するために維持しなければならない社会生態学的限界に、我々がかつてなく近づいていることを示しています。2022年版は、23カ国65名の第一線の研究者によるコンソーシアムによって作成されました。

今年度、日本からは以下の方々が本報告書作成に携わりました(敬称略)。

  • Kim Schumacher (九州大学)
  • 亀山康子(東京大学/国立環境研究所)
  • Sunhee Suk (Future Earth事務局日本ハブ、長崎大学)
  • Giles B. Sioen(Future Earth事務局日本ハブ、国立環境研究所)

10NICS2022は、次の10のメッセージを取り上げています。

  1. 適応は無限という神話を疑う
  2. 脆弱性のホットスポットは「リスクのある地域」に集中する
  3. 気候と健康の相互作用により新たな脅威が出現した
  4. 気候変動による人口移動に対しては、エビデンスを踏まえた先見的な行動が求められる
  5. 人間の安全保障には、気候安全保障が必須である
  6. 持続可能な土地利用は気候目標達成に不可欠である
  7. 民間のサステナブルファイナンスの取組みは根本的な社会経済の転換を引き起こせていない
  8. 損失と損害への対策が地球規模で緊急に求められている
  9. 気候変動にレジリエントな開発に向けた包摂的な意思決定が必要である
  10. 構造的な障壁と持続不可能なロックインの打破が必要である

発表記者会見には、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長のSimon Stiell氏も同席し、本報告書に大きな謝意を示すとともに、「科学は我々の活動すべての中心にある」ことを強調しました。また、本報告書の編集委員であるJohan Rockstrom教授(ポツダム気候影響研究所長)は、会見で「地球と交渉することはできないし、大気と交渉することもできない」と述べました。

記者会見の録画はこちらにてご覧いただけます。

<NEW>10NICS2022をご紹介する動画の日本語版を公開しました。

<本政策報告書の内容が掲載された学術論文> 

2022年11月10日、ケンブリッジ大学出版局より “Global Sustainability”誌にオンライン掲載(査読済み。原稿はそのまま引用可能ですが、ジャーナルによる書式設定はまだ行われていませんのでご注意ください。)

なお「10 New Insights in Climate Science/気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」2021年版 の和訳をこちらからご覧いただけます。