【開催報告】第2回Future Earth日本サミット2022

~Future Earthは人新世にどう取り組むべきか~

「第2回Future Earth日本サミット~Future Earthは人新世にどう取り組むべきか~」をフューチャーアース日本委員会が2022年3月18日に主催し、人新世に象徴される地球規模の危機的な状況にどのように取り組んでいくべきか、講演や議論を通じて、多角的な視点から考えました。

開会挨拶において、フューチャーアース日本委員会・共同委員長である安成哲三より、Future Earth設立の背景や目指している社会像、また「人新世」と呼ばれる現代が直面している課題の大きさについて言及があり、これらの課題解決に向け、様々なステークホルダーとのさらなる連携や協働を目指す努力を続けていく必要性が示されました。

午前中のオープンセッションでは、「人新世におけるSDGsの意義と役割をめぐって」と題して、経済成長と環境のバランスは可能かどうかについて、2名の専門家の各々の視点より、講演をいただき、200名を超える方にご参加いただきました。

まず、『人新世の[資本論」』の著者として知られる大阪市立大学・経済学研究科・准教授(現東京大学総合文化研究科)、斎藤幸平氏から、「持続可能な開発は可能か-SDGsと脱成長」というテーマで講演がありました。気候変動に代表されるような地球が直面している危機に対し早急かつ大胆な変革が求められていることや、「脱成長」の視点からみたSDGsの矛盾点、今後の目指すべき社会とその可能性についてお話をいただきました。

次に、慶應義塾大学大学院・政策メディア研究科・教授、蟹江憲史氏より「人新世とSDGs」というテーマで講演がありました。SDGsは様々な意見を取り込んだ作成プロセスを経て、全・国連加盟国の合意を得ている目標であることも踏まえ、人新世の中でSDGsの持つ意義、取り組みや変革に向けた動きについてご紹介いただきました。

その後、北海道大学/総合地球環境学研究所・教授、山内太郎氏を司会に迎え、3名でディスカッションを行いました。「脱成長」も「SDGs」も、背景にある問題意識や達成すべき社会像に共通点があるということを確認し、目指すべき社会像に向けたアプローチ方法―地球環境や人間のウェルビーイングを維持するための方法―を様々な視点から議論し、社会の「変革」や「移行」につなげていく必要性があることが認識されました。 そして、Future Earthはまさに、望ましい社会を「どのように」達成するかという議論を様々なステークホルダーと行うのにふさわしい場であるとの言及もありました。

午後の部は、関係者による3つの分科会(①Future EarthとSDGs ②Future Earthと人新世 ③Future Earthと次世代)に分かれ、研究者だけでなく、民間企業、国際機関、自治体、市民社会、若手世代等、様々な立場からの参加者が集い、意見を出し合いました。その後の総合討論で、各分科会から、それぞれの議論の共有をいただきました。

続いて、Future Earth日本ハブ事務局長・春日文子氏より、Future Earth国際事務局の体制や活動紹介、またFuture Earthの国際活動に参加する方法等について、紹介をいただきました。また、参加者からの情報提供も踏まえて、Future Earthの今後の取り組み方について議論しました。アカデミア以外の参加者からは「日本における自治体と科学コミュニティーの連携促進の必要性」、「国際的な政策会議等の場に、フューチャーアース日本委員会の参加機関としてどのように関われるか」、「生活者の行動変容を促す科学の議論」、「様々なステークホルダーとの対話の必要性」や「若手世代とのパートナーシップのあり方」といった問題提起があり、組織や世代の枠を超えた議論が行われました。

最後に、フューチャーアース日本委員会・共同委員長の山本百合子より、フューチャーアース設立の趣旨を改めて思い返すとともに、「未来の地球」に向けて戦略的な視点を持ち、多様なステークホルダーと一緒に社会変革を目指し、今後の活動を進めていく意思を表明する挨拶があり、閉会となりました。

※本サミットは、公益財団法人イオン環境財団から協力を受け、実施しました。

左上:北海道大学/総合地球環境学研究所 山内太郎教授、右上:慶應義塾大学大学院 蟹江憲史教授、 下:大阪市立大学(現:東京大学)齋藤幸平准教授