排水を浄化しながら発電する方法を発見

バクテリアが有機物を摂取する性質を利用して、工学チームが微生物燃料電池の新たな展開を考案

文:Prachi Patel

2021年6月10日

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エネルギーが不足しているにもかかわらず、多くの人々が廃棄物を生み出している現在、廃棄物を有効に利用することは賢明な選択です。排水の場合、その中に含まれる有機物が貴重なエネルギー源となります。

セントルイス・ワシントン大学の研究者らは、そのエネルギーを利用するシステムを開発しました。排水をろ過して非飲料水を生成すると同時に、排水から電気を生成する装置を作りました。Environmental Science: Water Research & Technology誌に掲載されたこの技術は、排水処理を向上させ、さらにエネルギー・ニュートラルにすることができると研究者が述べています。

従来の排水処理は大量のエネルギーを消費しています。米国では、排水・飲料水処理施設が全電力の3〜5%を消費しています。世界的に見ても、排水処理施設は二酸化炭素だけでなく、メタンや亜酸化窒素などの温室効果ガス排出量の約3%を排出しています。

最近では、排水システムのエネルギー使用量を削減する試みがなされています。研究者らは、バクテリアが下水や排水を水素燃料やバイオプラスチックに変換できることを明らかにしました。また、排水中の汚染物質である窒素やリンを除去して肥料に再利用するシンプルで低エネルギーの活用方法も提案されています。

さらに、排水からエネルギーを生成する別の方法として、バクテリアを利用して排水を電気に変換する「微生物燃料電池(Microbial fuel cell)」という装置があります。

今回開発された装置は微生物燃料電池を改良したもので、電気だけでなく水も利用できるという利点があります。燃料電池は、2つの電極を持つ電池のような装置です。ワシントン大学の研究チームは、電極の1つをカーボンクロスで作りました。この布は、排水中の有機物を集めるフィルターの役割を果たします。バクテリアは布の上で簡単に成長することができ、有機物を消費して電子を放出し、電気を生成します。

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一方、集められた水は、灌漑などの非飲料水として使用できます。またきれいな水が生成できるため、環境にそのまま戻すこともできます。

実験室でのテストでは、実際の排水をシステムに供給して30日間の試験を行い、効果を確認しました。今後は、このシステムをスケールアップして、現実の世界でテストすることを目指しています。

出典: Fubin Liu et al. Enhancing the performance of a microbial electrochemical system with carbon-based dynamic membrane as both anode electrode and filtration media. Environmental Science: Water Research & Technology, 2021.