持続可能なファッションへの大きな一歩:科学者が藻類から生分解可能で炭素を吸収する繊維を開発
3Dプリンターを使って作られた光合成素材、Tシャツや人工葉にも使えるほど丈夫。
2021年5月6日
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藻類は池の水垢や海藻などの単純な水生植物で、食品、化粧品添加物、肥料などの重要な原料となっています。また、バイオ燃料やバイオプラスチックの原料としても期待されています。そして今度は、サステナブルな衣服での活用を期待されています。
研究者らは、3Dプリンターを使って、藻類から衣服やラベルの製造に使用できる丈夫で持続可能な素材を作りました。Advanced Functional Materials誌に掲載されたこの素材は、生きて呼吸している藻類からできているため、この素材で作られた衣服は植物のように空気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を吐き出す光合成を行います。さらに、この素材は大規模に作ることが容易で、生分解性があります。
このようなバイオテキスタイルは、今日、環境に悪影響を与えているファッション業界の方向性を変えることになるかもしれません。刻々と変化する低価格のファッションのための服の製造は、航空機と船舶を合わせたよりも多くの二酸化炭素を排出しています。また、膨大な量の水を使用し、有害な排水やマイクロプラスチックによる汚染も引き起こしています。さらに、衣類の5分の3以上は、数年以内に埋め立て地や焼却炉に送られています。
そこで、環境に優しい方法として、企業やデザイナーが藻類を利用したエコファッションに取り組んでいます。藻類は貴重な土地を占有せず、驚異的な速さで成長し、水や資源も綿やウール、シルクなどの従来の天然素材よりはるかに少ない量しか使用しません。ただそれだけでは、日光や風雨などの自然環境に長期間耐えられる丈夫な素材とはいえません。
デルフト工科大学とロチェスター大学の研究チームは、藻類を使った素材をより耐久性があり、尚且つ生産しやすいものにしたいと考えました。そこで彼らは、バクテリアが排泄する有機化合物であるバクテリアセルロースに注目しました。
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研究チームは、バクテリアのセルロースをプリンターの紙に見立て、生きた微細藻類のインクを使って、3Dプリンターでセルロースに生きた藻類を付着させました。そして、バクテリアのセルロースの強靭さと藻の光合成能力を兼ね備えた素材を開発しました。
ロチェスター大学のAnne Meyer教授(生物学)は、プレスリリースで、「私たちが開発した光合成可能で、且つ生きている素材は、実社会で応用するのに物理的にも十分頑丈な人工の光合成材料の最初の例であり、この分野にとって大きな前進です」と述べています。
この素材のもう一つの利点は、簡単に大規模な生産ができることです。この素材の小さな断片を培養して成長させ、より多くの材料を作ることができます。
出典: Srikkanth Balasubramanian et al. Bioprinting of Regenerative Photosynthetic Living Materials. Advanced Functional Materials, 2021.
DATE
June 23, 2021AUTHOR
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